公開: 2021年5月5日
更新: 2021年5月20日
ベーシック・インカムの考え方は、16世紀のイギリスで提唱され始めた、最低所得を保障する考え方である。この古い考え方を、現代の世界で推進しようとしているのが、フリードマンら、新自由主義経済を唱えている人々であることには、注目せざるをえない。根底にある思想は、親からの多額な資産を遺産として継承した人々がもつ、有利な競争条件の是正である。
1597年イギリスでは、人々から救貧税を徴収し、貧民に生活補助金を支払う救貧法が制定された。そして、1601年、国家としてエリザベス救貧法が制定された。1795年には、スピーナムランド制が実施され、一定基準以下の賃金労働者に対して、徴収した救貧税を利用して生活補助費を支給する制度が確立された。補助金の額は、パンの価格と家族の人数で決められた。
18世紀のイギリスの哲学者、トマス・ベインとトマス・スペンスは、「土地配分の正義」と「幼児の権利」と題した著書の中で、人間が21歳になった時には年15ポンド、50歳以上の人々には年10ポンドを給付する案を、ベーシック・インカムとして提案したのが、名前の由来である。彼らは、土地の所有者に課す税を財源とする案を提案した。
19世紀になると、J. S. ミルは、その著書「経済学原理」の中で、労働ができる人にもできない人にも、最低限度の生活のための生活費を給付すべきであると主張した。
20世紀になると、C. H. ダグラスは、その著書の中で、国民配当を支給する案を提案したが、当初、経済学者のケインズは、その案に否定的だった。しかし、ケインズは、後にヘバリッジと共に、福祉保障に基づく国家の運営を提唱した。
その後、ジュリエット・リズ・ウィリアムズは、「新しい社会契約」において、社会配当と呼ばれるペーシック・インカム制度を唱えた。ここでは、比例所得税が想定されていた。フリードマンは、1962年、「資本主義と自由」において、「負の所得税」と言う考え方を提案した。